このごろ、どうも腰痛が続いていて、どこか悪いのではないかと不安になる方もいるかと思います。
腰痛は、筋肉や骨の問題、神経の問題など、様々な原因から起こりますが、中には内臓、特に腰に近い部分にある消化器の不具合から起こることもあります。
大腸がんというと、消化器の病気ですからお腹の症状がまず思い浮かぶと思います。しかし、大腸がんには、お腹の症状だけではなくその他の症状もあり、その中でも注意が必要なのが腰痛なのです。ここでは、大腸がんと腰痛の関係、注意すべき腰痛、検査の仕方などについて説明していきます。
大腸がんとは?
がん細胞が大腸内で増殖して悪性腫瘍となったものが大腸がんです。
以前は日本のがんの部位別罹患数では胃がんが多かったのですが、食生活の変化などによって、近年では大腸がんが増えてきており、2019年の国立癌研究所の統計では男女計では罹患部位のトップになっています。
大腸にできるがんとは
大腸がんは前述のとおり、大腸にできたがんです。しかし大腸と一口にいっても、大腸は平均1.6m程度と長い臓器で、実際には様々な部位が存在します。回盲部から始まり、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、上部直腸、下部直腸、肛門管と順に区切られています。結腸は盲腸からS状結腸までの範囲を指し、直腸は上部直腸から肛門管までを含みます。結腸がんや直腸がんとして部位ごとに呼ばれることもありますが、これらも大腸がんに属します。
ほとんどの大腸がんは、前がん病変である大腸ポリープから発症しますにで、早い段階でポリープを摘出することが予防の鍵となります。S状結腸と直腸で全体の7割を占めるという報告もあります。
大腸がんになる原因
大腸がんの原因は遺伝や食生活など、複雑な要素がからんでいると考えられていますが、発症リクスを高める要因としては喫煙、飲酒、肥満などがあげられます。
喫煙
喫煙者の大腸がん発生リスクは、喫煙本数と喫煙期間に比例して増加する傾向があります。国立がん研究センターの研究によれば、たばこを吸う人は非喫煙者に比べて大腸がんを発症する確率が1.4倍高いという結果が示されています。
飲酒
アルコールには発がん性があることがわかっていますので、がん発症とお酒は大きく関係があります。大腸がんの場合も、お酒をまったく飲まない人に対して、お酒を日本酒にして1日1合以上2合未満飲んだ場合大腸がんの罹患率が1.4倍、2合以上のむ人では2.1倍高くなるという研究によって明らかになっています。
肥満
肥満と大腸がんも関係性があるといわれています。BMIが上昇すると、大腸がんのリスクも増加します。加工肉や赤肉は大腸がんと関連しています。国立がん研究センターによると、加工肉は「人に対して発がん性がある」と判断され、赤肉は「おそらく人に対して発がん性がある」と評価されています。
大腸がんの症状
大腸がんは、早期にはほとんど自覚症状が現れません。進行してくると、膨満感、腹痛といった下部消化管の症状に加えて、排便症状なども現れるようになります。
排便状態の変化
大腸がんが進行すると、急に便が細くなってきた、よく便秘をするようになった、下痢と便秘を繰り返すようになったなど、排便に関してこれまでと異なる状態が現れてくることがあります。排便状態に変化を感じた場合は、まずは消化器内科に相談して検査をしてもらいましょう。
もちろん、急に排便の状態がかわってきたといっても必ずしも大腸がんがあるとは限りませんが、そうした変化は、それ以外にも多くの大腸の病気からきている可能性もありますので、まず診察を受けることが大切です。
血便
大腸がんになると、血便が見受けられます。この血便の症状が持続することで、「何か異常があるのではないか」と気付く方も珍しくありません。血便が発生するのは、がんが形成した新しい血管が排便時に傷ついて出血するためです。がんによって形成された血管は通常のものよりも脆弱であり、わずかな刺激でも出血が生じます。
血便を「痔かもしれない」と軽視してしまうことがありますが、血便には様々な病気の可能性が潜んでいるため、検査を受けることが重要です。なお、血便とはいえ真っ赤な血が混ざることは少なく、多くは酸化して黒く変色した血が混ざることが一般的です。
体重減少
大腸がんが進行すると、体重減少がみられることがあります。がん細胞は通常、私たちが食事から摂取した脂肪やタンパク質などを栄養源にして成長します。このため、摂取した栄養素ががん細胞に利用されると、通常の食事量でも体重が減少することがあります。ただし、初期の段階では体重減少が見られることは少ないです。したがって、体重が減少している場合は、大腸がんが進行している可能性が考えられます。
貧血
大腸がんがつくる新生血管は大変破れやすくなっているため、出血が持続するとヘモグロビンが減少し、貧血に陥る可能性があります。そのため、ふらつきやめまいなどの症状が現れる場合は、留意が必要です。
ヘモグロビンは、タンパク質と鉄が結合してできた分子で、酸素を結びつけて全身に運搬する重要な役割を果たしています。出血が発生すると、ヘモグロビンも失われるため、酸素供給が不足し、それがふらつきやめまいなどの症状を引き起こす要因となります。
腹痛
大腸がん自体に痛みはありませんが、大腸がんが大きくなると、便の通過障害がおこり、腹痛が起こることがありますが、痛みはずっと続くわけではなく、良くなったりまた痛くなったりを繰り返します。
また、場合によっては、お腹ではなく肛門あたりに痛みを感じるケースもあります。
大腸がんが原因で起こる腰痛
腰痛は、大変ポピュラーな症状で、日本整形外科学会の調査では、20~70歳代の男性では57.1%、女性では51.1%と、それぞれ成人男女の半分以上の方が、治療が必要なほどの腰痛を体験したことがあると答えているほどです。
腰痛の原因も、整形外科領域のものが多いのですが、中には消化器病や循環器病などに由来するものなど様々となっています。
大腸がんもその中の一つで、大腸がんができた場所によっては、腰痛が現れる場合もあります。
大腸がん以外の消化器系疾患で腰痛が現れる例
腰痛は大腸がんの症状として現れることもありますが、大腸憩室炎、虫垂炎、胃・十二指腸潰瘍などの消化器疾患でも起こることがあります。
腰痛が起こる可能性のあるおなかの病気
大腸憩室炎
大腸憩室炎は、大腸の壁に形成された袋状のへこみで炎症が生じた状態を指します。通常、憩室ができても症状が現れないことが一般的ですが、まれに出血や炎症が発生することがあります。大腸憩室炎になると、一般的には腹痛が主な症状として現れますが、中には腰痛を引き起こす場合もあります。
虫垂炎
虫垂は盲腸の先端に紐のように飛び出した臓器で、右下腹部に位置しています。この虫垂に便などが入り込んで入口がつまってしまって炎症を起こしてしまったものが虫垂炎です。初期にはみぞおちあたりから痛みが始まり、だんだん下がって最終的に右下腹部の痛みとなりますが、虫垂の位置が背中に近い側にある人の場合、腰痛として感じられることがあります。
胃潰瘍
胃潰瘍は、胃の粘膜に炎症が生じている状態です。通常、健康な状態では、胃を胃酸や消化酵素から守るための物質が生成されています。しかし、この胃を守るメカニズムが弱まったり、胃酸の分泌が増加したりすると、胃にダメージが生じ、炎症が発生します。潰瘍が背中側に形成された場合、腰痛の症状が現れることがあります。
注意が必要な腰痛
腰痛は多くの人が普段の生活で経験する一般的な症状です。しかし、「いつものことだろう」と軽視することがあります。次のような症状が見られる場合、通常の腰痛とは異なり、早めに医療機関での受診が必要かもしれません。原因を明らかにするためにも、できるだけ早く専門の医師に相談しましょう。
腰痛がずっと続いている
身体を動かすと腰に痛みがくる、同じ姿勢を続けていると痛みがひどくなってくるといった、痛みに波のような強弱があるケースは整形外科系の腰痛である場合が多く、あまり消化器系の病気の心配はいりません。ただし、どのような姿勢をとっても腰痛がずっと続いていて改善せず、またなんらかの動作がきっかけで強く痛むといったことがない場合は、消化器などに病気がひそんでいる可能性があります。
腰痛が続いていて体重も減ってきた
整形外科系の腰痛でも、腰痛が激しくてご飯も食べられず、一時的に体重が減ってしまうというケースもありますが、ジクジクとした腰痛が続き、体重がずっと減り続けているといった場合は、大腸がんも含んだ消化器の病気による腰痛ということも考えられます。
大腸がんの検査方法
便潜血検査
便潜血検査は、便中に血液が混ざっていないかを調べる検査です。便を検査用のスティックで2回に分けて2日間にわたり採取します。検査結果が陽性の場合、大腸がんの疑いがある可能性があり、通常は全大腸カメラ検査や大腸CT検査などへ進むことが一般的です。
大腸カメラ検査
肛門から先端にカメラについたスコープを挿入して、大腸全体の粘膜をくまなく観察することができる検査です。途中疑わしい組織をみつけた場合、組織のサンプルを採取して病理検査に送り、確定診断を行うことができます。また粘膜にポリープをみつけた場合は、その場で切除して将来のがん化を予防することもできる大変有効性の高い検査です。
大腸CT検査(CTコロノグラフィー)
大腸カメラ検査より侵襲が少ない検査で、がんの位置や拡がり、転移の有無などを調べることができます。ただし、細胞の採取ができませんので、確定診断を行うことはできません。確定診断後に転移の有無などを確認して治療方針を決定していくために行うことが多い検査です。
大腸がんに関するQ&A
おならは増えてきたのですが、大腸がんの初期症状でしょうか
大腸がんはほとんど初期の自覚症状が現れない病気です。また、大腸がんは初期にはほとんど大腸ポリープの形態をしていますので、初期症状でおならが増えることはありません。
大腸がんで腹痛がでるとしたら、どのような痛みでしょうか
痛みが持続することはあまりありません。痛みが出たりなくなったりを繰り返すケースが一般的です。
大腸がんで体重減少がある場合、どの程度の減り方でしょうか
症状によりけりですが、1か月で3~4kg程度も減少することがあります。意図的な減量を行っていないにもかかわらず、それほどの体重減少が見られる場合は、消化器病やその他の病気の可能性が高くなっていますので、すみやかに医療機関を受診してください。
大腸がんの検査なら当院まで
動作に関係せずに腰痛が生じたり治まったりする場合は注意が必要です。大腸がんは定期的な検査によって死亡率を低減できる疾患です。40歳以上の方で発症リスクが高まる場合は、年に1度の検査を受けるように心がけましょう。
当院では、内視鏡検査に関しては、専門医や指導医に認定された医師が検査を担当しています。眠ったまま検査も受けられますので、苦痛のない大腸カメラが可能です。
予約はWebでは24時間受け付けており、LINEからの予約も可能です。