便秘が長く続いている方へ
便秘とは、便に含まれている水分量が減って硬くなったり、腸管が狭くなることによって排便に支障をきたしたり、便を出す頻度が少なくなったりする状態です。
食事をして便が出るまでの時間には、個人差やその時の体調などで大きく変動しますが、平均24時間ほどだと言われています。ただし、排便の頻度が2~3日に1回だったとしても、するりと排便できて、かつ膨満感や残便感などの悩みがないようでしたら便秘ではありません。毎日便が出ている状態でも、強くいきんでも少ししか出なかったり、残便感などに悩んでいたりする場合は便秘と診断されます。
運動不足や食物繊維の不足が原因で起こりやすいのですが、中には何らかの疾患の症状として便秘になっているケースもあります。また、便秘が長期間続くと、大腸疾患や痔の発症・悪化のリスクが上昇してしまいます。また、長期間続くことにより、日常生活に支障をきたす可能性もあります。特に「便がなかなか出ない」「便秘と下痢が交互に繰り返される」「便が残っているような感覚がある」「強くいきまないと便が出ない」などでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
便秘の原因
便秘の原因は色々あります。便秘の種類は機能性便秘と器質性便秘に分けられ、機能性便秘はさらに弛緩性便秘とけいれん性便秘・直腸性便秘の3種類に細かく分けられます。
他にも、全身の病気の症状として便秘になっているケースや、服用している薬の副作用などで起きていることも考えられます。
機能性便秘
弛緩性便秘
大腸のぜん動運動が低下することで生じる便秘です。腸管の緊張がゆるむことでぜん動運動が落ちてしまい、便がスムーズに排出されなくなり大腸内に長く溜まってしまいます。
時間が経つと便の水分が吸収されてしまうため、便が硬くなり、排便に支障をきたします。主な原因は運動や水分、食物繊維の不足、腹筋力の低下、過度なダイエットなどが挙げられます。女性に多くみられ、残便感や膨満感、食欲低下といった症状を伴う傾向が強いです。また、肩こりや肌荒れ、イライラなどを伴うこともあります。
けいれん性便秘
大腸の過緊張によって起こる便秘です。自律神経のバランスが乱れてしまい、副交感神経の過剰な興奮によって、自律神経によってコントロールされている腸管も過度に緊張してしまい、ウサギのフンに似た硬くて丸く、小さい便が出るようになる特徴があります。
強くいきんでも少ししか便が出ず、残便感や下腹部痛などを伴いやすいです。
便秘と下痢を交互に繰り返す方も少なくありません。自律神経の乱れを引き起こすストレスや環境の変化などが原因で、発症することもあります。また、過敏性腸症候群の便秘型や交代型も、これに分類されます。
直腸性便秘
直腸に便が溜まってしまうことで起こる便秘です。便が直腸に達すると便意を感じ、それが最も快適に排便できるタイミングです。便意を感じても我慢する癖がついてしまうと、便が直腸に達しても排便反射が起こらなくなり、便意を感じにくくなります。そのため、直腸に便が溜まってしまうのです。
また、このタイプは便がたまることで、排便困難になる方もおります。高齢者に多いタイプですが、痔などを抱えていて、無意識にトイレを我慢してしまい発症する方も存在しております。
器質性便秘
大腸がんや腸閉塞(イレウス)、腸管癒着、直腸瘤などで小腸や大腸に通過障害が起こることで、便秘になってしまうタイプです。このタイプの方が下剤を安易に使ってしまうと、腸に穴が開く「腸管穿孔(せんこう)」に至る危険性があるため、安易な下剤の使用は禁物です。治療が必要な疾患によって引き起こされているため、特に激しい血便や腹痛、嘔吐などが起きた場合は、速やかに医療機関へ受診してください。
便秘を伴う疾患
便秘を治療せずにいると便が大腸の中で硬くなってしまい、ますます排便がスムーズにできなくなります。また、硬い便や強いいきみは、痔の発症リスクを大きく高めてしまうものです。
痔になると、排便した時に強い痛みや出血が起きやすくなるため、便意があっても無意識に排便を我慢してしまい、便秘になるという悪循環を繰り返しやすくなります。
特に切れ痔は、便秘によって悪化しやすい痔です。何度も肛門が切れてしまうことで瘢痕化して狭窄を起こしてしまうため、さらに排便がうまくいかなくなります。
いぼ痔も便秘の強いいきみによって発症・悪化しやすい痔です。いぼ痔でも内痔核である場合は、強いいきみによって出血や痔核の脱出が起こりやすく、悪化すると直腸粘膜も一緒に出てきてしまいます。
頑固な便秘が長期間続くと、大腸の潰瘍をはじめ、大腸粘膜の穿孔や腹膜炎、虚血性大腸炎を発症するリスクが上がります。重症化を防ぐために、適切な治療を早く受けることが大切です。
検査と診断
ここ最近の排便の調子やお悩みの症状、症状の変化、既往症、現在服用している薬などについて、細かくお伺いしていきます。その後に腹部の聴診と触診、腹部X線検査を受けていただきます。検査結果から、何らかの疾患がないか、便秘のタイプ、原因などを総合的に判断して、診断しております。
また、必要に応じて、血液検査や超音波検査、大腸カメラ検査を受けていただくこともあります。
大腸カメラ検査は、病変によって腸の閉塞・狭窄が起きていないかを観察することができる検査です。また、腸管の長さや、特定の疾患特有の病変がないかも、組織を採取して病理検査を行うことで分かります。また、早期の大腸がんやポリープがあるかどうかも確かめられます。当院の大腸カメラ検査は、経験・知識共に豊富な専門医が担当しており、鎮静剤を使ってウトウトしたまま検査を受けていただけます。
治療
疾患がある場合は、その疾患を治す治療を優先して行います。器質的問題がない場合は、薬物療法と生活習慣の改善で便秘を治していきます。
薬物療法
便秘のタイプやお悩みの症状、生活習慣などに合わせながら処方していきます。再診時には薬の副作用がないかをお聞きし、処方を微調整しながら改善していきます。
内服薬下剤と一口にいいましても、多くの種類があります。また、便の水分量をコントロールする薬など、下剤以外の薬も多岐にわたります。さらに、新しい作用が得られる新薬も出てきているため、選択肢が昔よりも多くなっています。漢方薬との併用処方も可能ですので、お気軽にご相談ください。
生活習慣の見直し
無理なく続けられる範囲で、かつ高い治療効果が得られるよう、当院では生活習慣の見直しや改善指導に力を入れております。食生活や運動の習慣などを見直すことは、再発防止においても有効です。
また、「便意を感じたらすぐにトイレに行く」など、正しい排便習慣も身に付けていただきます。些細なお悩みでも少しずつ改善することで、高い治療効果が得られることもあります。お気軽にご相談ください。