逆流性食道炎とは?
逆流性食道炎は、食道の粘膜が傷つき、炎症やびらんが生じた状態です。
食道は口から胃に食べ物を運ぶ管のことですが、なんらかの原因により胃酸が胃から食道に逆流することで引き起こされます。
逆流性食道炎を生じると、胸焼け、痛みを伴う嚥下困難、胸痛などの症状を引き起こす可能性があり、治療せずにいると日常生活に支障をきたすことも多い疾患のひとつです。
逆流性食道炎が疑われるような症状がある方は、場合によっては内視鏡検査で調べることも重要になってきます。
そこで今回は、逆流性食道炎について、原因や症状、治療方法、内視鏡検査を受ける理由などについてお話していきたいと思います。
逆流性食道炎の症状は?
逆流性食道炎は、
- 胸焼け
- 飲み込みづらい
- 飲み込む時に痛みを感じる
- 食べることで胸骨の後ろあたりの痛みを感じる
- 飲み込んだ食べ物が食道に詰まる
- 酸っぱいものが上がってくる感じがする
などの症状があります。
上記のような症状が続いている場合は、逆流性食道炎が疑われますので、医師の診察を受け、必要に応じて内視鏡検査をうけることをおすすめします。
また、逆流性食道炎の症状に似てはいますが、次のような症状のある場合は消化器系やそれ以外での重篤な病気の可能性もありますので、早急な病院受診をおすすめいたします。
- 数分以上続く胸の痛み
- 心臓病の病歴があり、胸痛がある
- 食べた直後に息切れや胸痛が発生する
- 大量の嘔吐、しばしば激しい嘔吐がある
- 嘔吐後の呼吸困難がある
- 黄色や緑色または血液を含む嘔吐がある
逆流性食道炎の原因は?
逆流性食道炎を引き起こす原因として、大きく3つの要因をご紹介させていただきます。
1.下部食道括約筋圧の低下
下部食道括約筋により、通常胃の内容物が逆流しないようにする機構が働いていますが、食道裂孔ヘルニアを伴うなど下部食道括約筋圧が低下することで、胃液や十二指腸液の逆流が起こってしまい逆流性食道炎が引き起こされます。
2.腹圧の上昇
妊娠や肥満、食べ過ぎや早食いなどで腹圧が上昇することにより、胃や十二指腸から食道の方へ押し戻されることで逆流性食道炎が引き起こされることがあります。
3.術後の影響
胃や食道の手術を受けた場合、形態の変化や繋ぎ目の状態によって胃酸の逆流が起こりやすくなることがあり、逆流性食道炎が引き起こされることがあります。
逆流性食道炎はこれらのどれか一つだけが原因となっているわけではなく、複数の要因が合併することで引き起こされることも多い疾患なのも特徴です。
逆流性食道炎の危険因子
逆流性食道炎の危険因子は様々ありますが、主に次のようなものがあります。
- 寝る直前に食べる
- 過剰なアルコール、カフェイン、チョコレート、ミント風味の食品などの食事要因
- 脂肪分の多い食事
- 喫煙
- 肥満
また、次のような食品が逆流性食道炎の症状を悪化させる可能性があります。
- トマトベースの食品
- カフェイン
- アルコール
- 辛い食べ物
- にんにくと玉ねぎ
- チョコレート
- ミント風味の食品
ですので、生活習慣だったり食生活を変えることで逆流性食道炎を予防したり、症状を改善させることも可能になります。
逆流性食道炎はどうやって治す?
逆流性食道炎の治療は大きく次の3つがあります。
- 生活習慣の改善
- 薬物治療
- 手術
それぞれ詳しく説明していきます。生活習慣の改善
すべての方にとって、生活習慣の改善は治療の基本になります。
適切な体重の維持、 就寝前2時間以内の食事摂取を控える、脂肪を多く含む食事を避ける、 禁煙、 適切な飲酒量など様々な改善項目があります。
逆流性食道炎の種類によっては、次のような行動を心がけることだけでも症状を軽減したり、再発を予防することもできます。逆流を増加させる可能性のある食品を避ける
一部の食品は症状を悪化させることがわかっているため、そのような食品を過剰に食べることは避けてください。(アルコール、カフェイン、チョコレート、ミント風味の食品など)
体重を減らす
体重を減らし、健康的な体重を維持するのが大切です。
禁煙する
タバコに含まれるニコチンには、胃酸の分泌量を増加させる働きがあり、胃酸が多くなると食道への逆流のリスクを高めます。
食後すぐに横にならない
食後の体勢に気をつけましょう。特に食べた後はすぐに横にならずに、食べてから少なくとも3時間は空けるようにしましょう。
ベッドの頭を上げる
頭を上げておくことで胃酸が逆流するリスクを軽減することが可能です。
これらの生活習慣をコツコツと続けることで体に染み付き、症状の改善につながります。
薬物治療
薬物治療としては、酸を抑制することができるガスターなどのH-2受容体遮断薬と呼ばれる薬や、ランソプラゾールやネキシウムなどのプロトンポンプ阻害剤(PPI)と呼ばれる薬などが有効です。
また、メトクロプラミドなどの胃の運動促進薬が有効になることもあります。
他に、ボノプラザン (P-CAB) という薬はPPIと比較し酸の抑制効果が迅速で強力であるため、PPIが効かない抵抗性のある疾患に対しても選択肢となり得てきます。手術
上記の治療でうまく改善がない場合は、手術をすることで軽快に向かうこともできます。逆流性食道炎の多くの原因となっている食道裂孔ヘルニアを改善させる手術が有名です。腹腔鏡を用いた手術になることが多く、傷も小さく体にやさしい手術といえます。症状を改善させるのはもちろんのこと、長期的にみていくと内服薬をずっと継続するより治療費を抑えられる可能性もあるという利点もあります。
逆流性食道炎の検査方法は?
逆流性食道炎の主な検査方法としては、以下です。
- バリウム検査
- 24時間PHモニタリング検査
- 内視鏡検査
バリウム検査
このバリウムが食道と胃の内壁を覆い、レントゲンを用いることで臓器の形状をみることができます。
バリウム検査は、食道の狭窄、その他の構造変化、裂孔ヘルニア、腫瘍、または症状を引き起こしている可能性のあるその他の異常を特定するのに役立ちます。
24時間phモニタリング検査
24時間食道pHモニタリングも有効であり、これは食道内の酸の度合いを24時間モニタリングします。
胃酸が逆流してしまうと、PHが下がるため、その時間を測定して判断します。
具体的にはPH4以下である時間が1日のうち45%以上になっているかを確認します。
ただし、この検査は特殊な装置が必要であり、入院して行う必要があるため、検査のできる病院は非常に限られています。
内視鏡検査
内視鏡検査は、よく胃カメラと呼ばれている検査で、小さなカメラを備えた長くて細いチューブを口から食道に挿入して行います。
直接リアルタイムで状態を把握することができるので、炎症の程度や他に原因がないかなどしっかりとした判定をすることができます。
さらに、必要な時は生検をすることで、観察だけでなく同時に組織検査も行うことができますので、バリウム検査とは違って一回でわかる情報が多くなります。
ただ、逆流性食道炎の場合は、症状の程度と食道粘膜傷害の程度は必ずしも相関しないことも多いため、症状と所見をみながら医師が治療法の選択をすることになります。
逆流性食道炎の程度や原因を評価することは、治療の効果や治療後の再発の可能性を判断するのに役立ちますので、内視鏡検査は非常に有益です。
逆流性食道炎がひどい場合は、治癒効果を示すために内視鏡検査を繰り返す必要がでてくることもあり、経過を判定することができるのも内視鏡検査のメリットのひとつとなります。
逆流性食道炎を疑う症状がある場合は、内視鏡検査をうけてみましょう
逆流性食道炎の典型的な症状(胸やけ、呑酸)がある場合は、内服治療を開始することが多いですが、内視鏡検査は、現在、逆流性食道炎の診断や精査のために選択される最初の検査となっています。
内視鏡検査を受けると、逆流性食道の炎症の度合いについて詳しく調べることができますし、他の原因がないかも同時に知ることができます。
特に食道の障害の重症度をみることで、治療に対すや反応と治療後の再発の可能性を予測することもできますので、逆流性食道炎の疑われる症状のある方は、内視鏡検査を受けるようにしましょう。
一般的に内視鏡検査は『苦しい検査』というイメージがあると思いますが、当院では鎮静剤を使用して内視鏡検査をうけることができ、眠っているうちに終わることができますので、安心して検査を受けていただけます。特に内視鏡検査の経験がない方は、症状があれば一度内視鏡検査を受けることも視野にいれ、医師の診察をうけることをお勧めいたします。